花火大会へ行こう
夏のある日。
居間でテレビを見ていたら、毎年恒例の有名な花火大会の映像が映った。
「あ〜。花火いいな〜っ」
「花火？この間みんなでやったじゃねーか」
「違うわよ。自分たちでやるやつじゃなくて、花火大会のほう」
隣で寝そべってマンガを読んでいた乱馬は、かなり適当にあたしの話に相槌をうつ。
あたしの話より、マンガの続きのほうが気になるみたい。
「あー…。なんちゃら川花火大会、だのなんちゃら海岸花火大会だのってやつか？」
「そうそう。自分たちでする花火も楽しいけど、やっぱり打ち上げ花火っていいよねっ」
「…そっかぁ？どーせ人が多くてそんなによく見えねぇんじゃねーの？」
「そういうのがまたいいんじゃないっ。人が多くて、夜店もたくさん出てて。浴衣着てうちわ持って…」
「ふーん。そういうもんか？」
相変わらず、乱馬はマンガを読みながら適当な返事を返す。
まったく。ほんとに情緒ってもんが欠如してるわよねっ。
「まぁ、夜店はいいよな…っと」
私があきれて、一人ＴＶを見てると、乱馬が手元のマンガを閉じて起き上がる。
「んじゃ、行くか？花火大会」
「え？」
「今日って確か、あそこの川で花火大会するんじゃなかったっけ？」
…そういえば、昨日商店街でそんな話を聞いたような気が。
っていうか、なんで乱馬ってばそんなこと知ってんのよ？
「久しぶりに夜店のたこ焼き食いてぇしな」
「…あんたって、ほんと食い意地張ってるわよね」
「悪かったな」
そういいながら、乱馬は立ち上がる。
つられてあたしも立ち上がると…。
「乱馬くん！！あかねを頼んだよ〜っっ！！」
どこから現れたのか、お父さんが私と乱馬の肩を抱く。
「おっ…おじさんっっ！！」
「二人っきりで花火大会！大いに結構！！いやぁ〜いいねぇ」
感動して涙を流しつつ、お父さんはあたしたちの肩を抱きしめ、何気にあたしと乱馬をひっつける。
「なっ…！！なんでいっ！二人で行くなんて言ってねーぞっっ！！」
「そっ…そうよっ！！なんであたしがこんなやつと！！」
ついついいつもの売り言葉に買い言葉。
乱馬のこの言葉を聞き終えないぐらいに、あたしも思わず本心と逆のことを口に出す。
「あらあら。今日は花火大会があるの？」
「ぱふぉ？『夜店出る？』」
「久しぶりにいいかもねー」
そうこうしてるうちに、かすみおねえちゃんと早乙女のおじさまとなびきおねえちゃんも居間にやってくる。
「おーっ！！おれだってなぁ。こんなかわいくねーおんなと二人で花火なんて見たくねぇよっ」
「かわいくなくって悪かったわねっ！！なによっ！変態！！」
「おれのどこが変態なんだよっ！！」
「どこもここも！ぜぇーんぶ変態よっ！！」
…あああ。ダメだ。
気がついたらまた乱馬とけんかしちゃってる。
「それじゃあ、みんなで行きましょうか」
あたしと乱馬がいつもの口げんかをしていると、かすみおねえちゃんがにっこり笑顔で居間に入ってくる。
手に持っているのは、三人分の浴衣…。
「そうね。こんな調子じゃ、あんたたち行かないつもりでしょ？」
「そんなぁぁぁっ。二人で行ってきたらいいのにぃぃぃ」
「ぱふぉっ『お祭り万歳』」
なびきおねーちゃんに図星をさされちゃったあたしたち。
お父さんの涙の訴えには耳を貸さずに、そのままけんかはフェードアウトになっちゃった。
あーあ。結局こうなっちゃうんだよね。
「言っとくけどなー。別に二人が嫌ってワケじゃないんだぞ」
かすみおねーちゃんとなびきおねーちゃんが浴衣の着付けを始めて、お父さんたちも出かける準備をしだしたころ。
乱馬はあたしの隣に来て、ボソッとそうつぶやいた。
「わかってるわよ」
ふてくされたような顔で近づいてくるから、さっきのけんかの続きかと思って身構えたら…。
照れくさそうに乱馬はそうつぶやいてくれた。
うん。わかってる。
ただ、意地っ張りなあたしたちだから、ついつい…ね。
ほんと、売り言葉に買い言葉って、あたしたちのためにあるのかもね。
でも…。
次の花火大会は二人で行こうね。
今度こそ、ちゃんと二人で行くために誘ってね。
テレビのニュースで、関西では有名な「淀川の花火大会」が取り上げられていたのをみて作ったお話。
ちょっとラスト、あかねちゃんが乙女入っています（笑）
っていうか、意外と何気に私が書く中では乱あがちょいラブですｖ
まぁ、家族に冷やかされるたびにおじゃんになっている２人っきりのお出かけですが…。
たぶんねー。かすみおねえちゃんじゃないけど、早雲さんが口を出さなかったらもうちょっと早くにまとまってそうな気がして…。
まぁ、まとまりそうでまとまらないのが乱あの魅力なのですが（笑）
（05/08/09 作成 ブログにて発表済み分 05/09/14 加筆修正）
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