２．麦藁帽子
よく晴れた夏のある日。
「夏休みだし、ひさしぶりにどこかへ行こう」
誰が言い出したのかは忘れちゃったけど、そんな提案のもと、あたしたち家族は海水浴へ出かけることになった。
よく考えると、うちはよく家族で旅行をする。
日帰りも入れると、かなりよく行ってるんじゃないかな？
居候の人数も入れると、結構な数になるんだけど…。
だけど、やっぱりみんなで出かけるのはとっても楽しいし、あたしとしては大賛成なんだ。
海へ向かうバスを待つ間、この間買った白い麦藁帽子をかぶったあたしはついつい鼻歌なんて歌ってしまうほど上機嫌になっていた。
…隣でちょっと嫌そうな顔をしている許婚は、今回の海水浴をあんまり楽しんでないみたいだけど。
「ちょっと、乱馬？海に行きたくないの？」
「ああ？そりゃそーだろ。だって、女モンの水着だぜ？やっぱ、あんま着たくねーよな」
やっぱりそうか。
あたしの許婚は、水をかぶると女になってしまう。
だから、海とかプールとかに行くときは、水着は常に女物だ。
いつも抵抗なく着てるから、あんまり気にしてないと思ってたんだけど…。
やっぱり気にしてるんだ。
「そりゃそうと…あかね。…その帽子」
「え…？」
この前、学校帰りにさゆりたちと買い物に行ったときに買った、この白い麦藁帽子。
麦藁帽子って、なんか「女の子」しちゃうから、あたしには似合わないかと思ったんだけど…。
「白色」っていうのが変わってて、あまりにかわいくってつい買っちゃった。
せっかくの旅行だしってことで、初めてかぶってみたんだけど…乱馬、気づいてくれたの？
「それ…」
乱馬が口を開いたそのとき、タイミング悪く海へ向かうバスがバス停に到着した。
おとうさんたちが、そのバスに順々に乗り込んでいく。
あたしと乱馬も後に続いて。
結局、続きは聞けないまま、バスは出発した。
…あーあ。乱馬、なんて言うつもりだったんだろう。
バスから降りると、目の前には真っ青の海。
そして、白い砂浜には…。
…たっくさんの人。
「やっぱり夏休みは人がおおいわね」
なびきおねえちゃんが、カバンを担ぎなおしてボソッとつぶやく。
そうよね。夏休み入ったばっかりだし。
今年も猛暑だし。
でも、やっぱり海は気持ちいいな〜。
海沿いって、この潮の香りの風が気持ちいいのよね。
風が…あっ！！
突然、海からの強い風に乗って、あたしの麦藁帽子が飛ばされる。
「あっ！ちょっとっ…」
風に乗ってころころと転がる帽子。
せっかくのおろしたてなのにっ。
慌てて帽子を追いかけると、ころころ転がった帽子は、見慣れた足元で止まった。
「なーにやってんだ？あかね」
あたしの帽子を拾いながら、乱馬があきれた声を出す。
白い麦藁帽子は、乱馬の右手の指でくるくると回される。
「あ、ありがと。乱馬」
「しっかりかぶっとけよ。日差し強いんだから」
そういいながら、乱馬は帽子を軽く手ではたいて、あたしの頭にのせる。
めずらしく、優しいじゃない。
「その帽子、似合ってんじゃん」
…えええ？？？
今のセリフ、乱馬が言ったの？
なんか、びっくりするぐらい素直なんだけど…？
どうかしたの？
「あ…ありがとう」
「麦藁帽子なんて、子供がかぶるもんなんだと思ってたぜ。まぁ、あかねは子供みてーなもんだかんな」
「なっ…なんですってぇぇ！？」
…そういうことね。
結局一言多いのよね。あんたって。
まぁ、そのほうがあたしたちらしいんだろうけど。
「あかねー。乱馬くーん。行きますよー」
「ほらほら、お２人さん。こんなとこまできてケンカしなくったっていいじゃない」
あたしと乱馬がいつものように口げんかをはじめると、バスを降りて荷物の確認をしていたかすみおねえちゃんとなびきおねえちゃんがあたしたちに声をかける。
「あかねー。ちょうど場所があいたよーん」
「乱馬！さっさと来てパラソル立てる手伝いをせんか」
浜辺では、もうお父さんたちが場所取りをして待ってる。
「わーったよっ！ほら、あかね行くぞ」
そういって、乱馬は先にみんなのほうに走っていく。
…なんか、いいな。
いつか、このメンバーが本当の家族になるのかな。
もう、今でも十分家族みたいだけどね。
そう思いながら、あたしはおろしたての麦藁帽子を少し目深にかぶってみんなのほうに歩き出した。
あれ…？このあとがき、何気に消えてる。
今更ですが、あとがきかいておこうっと…。こっそりと（笑）
えーっと…。
このあかねちゃんがかぶっている麦藁帽子はＯＶＡオープニングの「恋はパニック！」のヤツをイメージしていますｖ
あのオープニングのあかねちゃんめちゃめちゃかわいいっすよねーｖｖ
白いワンピースに白い帽子。
乱馬くんのチャイナも激ラブですーっっっ♪
ちなみに、続編なんだか続編じゃないんだか…というお話がコチラ。
（05/07/30 作成 ブログにて発表済み分 05/09/14 加筆修正）
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