3.向かい合えば
『拝啓あかねさん。お元気ですか。
今、僕は沖縄に来ています。
もう夏だというのに、沖縄では日差しがゆるく、まるで春のような心地よさです。
今、僕は一面紫色の花が咲いている畑に来ています。
紫色の小さな花はとってもきれいで…。』
「まるで…あかねさんみたいです…。−だなんて書けるかよぉぉっ」
北海道の名所、ラベンダー畑のど真ん中で、永遠の迷い子響良牙は一人愛する天道あかねへの手紙をしたためていた。
「あかねさん…」
この間東京を出てからかれこれ一週間。
気がつけば良牙は日本の最北端の地、北海道へ来ていた。
…ただし、本人は沖縄にいるつもりであるが。
実は今回の旅は、良牙にとって一種の傷心旅行であった。
というのも…。
「あら、良牙くん。久しぶりねっ」
「あっ…あかねさんっ…。お久しぶりですっ!!」
さかのぼること一週間前。
いつものように修行の帰りに迷いながら道を歩いていると、偶然学校帰りのあかねと出会った。
頭に「超」と「スペシャル」が付くほどの方向音痴の良牙にとって、愛するあかねの通学路に偶然とはいえたどり着けたことは奇跡に近い。
「乱馬ならまだ学校だけど…」
「あっ…いや、別に乱馬には用事はなくて…」
ただ、せっかく見慣れた景色の場所に戻ってきたので、あかねと会えたらいいな、ぐらいの気持ちでさまよっていただけなのである。
「あ…あのっ!あかねさんっ…っ!!」
「乱馬ったら、せっかく良牙くんが東京に戻ってきてるのにね。今日も授業中に居眠りしてたから、残ってお説教されてるのよ」
相変わらずばかでしょ?と苦笑いしながら良牙を見上げるあかね。
そのあかねの瞳を見た良牙は、こっそりと隠しているあかねの想いに気がつく。
いや…もうずいぶん前からわかってはいるのだが。
あかねと向かい合うたびに、良牙は自分のこの気持ちが決してあかねに届かないことを思い知る。
あかねの頭の中は、乱馬のことでいっぱいなのだ。
いつも、どんなときでも。
自分は人間のときは「単なるいいお友達」で、ブタになったときは「ペットのPちゃん」なのだ。
きっと、一生あかねのなかでの乱馬の位置にたどり着けることはないのだろう。
「…あのっ!これっ…おみやげですっ」
「あ、良牙くんっ。いつもありがと〜っ」
修行の道中に買い集めたあかねへのお土産を渡す良牙。
あかねのこの笑顔が見たいが為に、ついついお土産を買い集めてしまうのだ。
「んじゃ…」
「え?もう行っちゃうの?せっかくだし、うちに寄っていけば?乱馬ももうすぐ帰ってくると思うし」
良牙にとって、逆らいがたいほどの力を持つあかねの誘いを、断腸の思いで断ち切る。
「いえ…。また修行に出ます。あかねさん…。…さよなら」
「え…?り…良牙くん??」
未練を残さないよう、屋根の上に飛び乗ってあかねのいる場所から離れていく良牙。
「…どうしたのかしら?良牙くん」
あかねさんと向かい合うたびに、乱馬にかなわないことを思い知る。
だが…どうしてもあかねさんを諦めることはできない。
この想い、どうすればいいのだろう?
いつか、いつか格闘で乱馬に勝った時に、この想いに決着をつけることができるのだろうか?
屋根つたいに走りながら、良牙は一人自問していた。
その質問に、まだ答えはない。
だが、答えを出すためには、乱馬に勝つしかないのだ。
「ふっ…。そのために修行の旅に出たというのに…。女々しいぞ、響良牙」
絵葉書を片手に、良牙はラベンダー畑の真ん中で一人自嘲の笑みを漏らす。
叶わない想いだとわかっていても、あかねに会いたいことには変わりはない。
「…東京に、戻ろう」
手紙を書き終えて、いつものリュックを背に、ラベンダー畑を後にする良牙。
ただし、方角はさらに北上していたのだが…。
2人のお題…なのに、あえて良牙(笑)
良牙くんも好きですv
あかねちゃんが乱馬くんを好きってこと、たぶん本能で感じているはずなのに、それでも「あかねさんが一番大切」という感じが好き(笑)
(あ、原作では後半にあかりちゃんが出てきて、何気に純情二股(?)男になってましたが 笑)
でも、文章で書くと難しかったです。
なんか、暗くなる…。
さすが、永遠の迷い子だわ(笑)
(05/07/31 作成 ブログにて発表済み分 05/09/14 加筆修正)
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