お日様のにおい




「そういえば、今日体育の時間にね…」

冬の終わりを告げるあたたかい春の日差しを受け、いつもの通学路をのんびりと帰る乱馬とあかね。
相変わらずフェンスの上が乱馬、その下にあかね、という並び方だ。

「そーいや女子は今日、バレーボールしてたっけ?」
「うんっ。やっぱり団体球技って楽しいよねっ」
「…そっかぁ?まぁ、教室で机に座ってるよりは全然たのしいけどよっ…と」

そう言いながら、乱馬はフェンスの上から道端でアタックの真似をしているあかねの隣に下りてくる。
ココから先はしばらくフェンスが途切れるので、二人は並んで歩く。
通学路でお互いの目線が一番近くなる場所である。

「乱馬は体育ならなんでも好きだもんね」

そういって、近くなった乱馬の顔を見上げてにっこりと笑うあかね。
その笑顔に、思わず赤くなりながら、憎まれ口をたたく乱馬。

「おー、どっかの誰かさんと違って、カナヅチでもねーしなっ」
「なんですってぇーっっ!!」

怒りに任せたあかねの蹴りを軽く避けて、ついでにあっかんべーなんぞしてしまう乱馬。
本人たちは気づいていないが、周りから見ると完全にラブラブカップルである。

「あっ…っと。あぶねぇっ」
「え??…っ?!」

さっきまであかねの蹴りを避けて、少しはなれたところであっかんべーをしていたはずなのに。
あかねが気づくと、なぜか赤いチャイナ服が目の前にあった。
そこで感じたのは…。

あれ?…この感じ。

「っと…。蜂だよ。蜂」
「あ…。あり…が…と」

あかねのそばに大きな蜂を見つけた乱馬、持ち前のすばやさであかねの肩を抱いて蜂を追い払う。
その間、あかねは何気に乱馬の腕の中にいることになってしまったのだ。
乱馬は無意識に起こした行動なので、その状態にまったく気づいていないのだが…。

「あぶねぇなぁ。ぼーっと歩いてっからだぜ?」

あかねの肩から腕をはずして、蜂を追い払ったほうを見ながら乱馬がつぶやく。
赤くなった顔を抑えるようにしながら、その乱馬のセリフにあかねは思わず言い返す。

…半分照れ隠しが入ってなくもない。

「なっ…なによっ!うるさいわね!!わかってたもんっ」
「なーに言ってんでいっ。気づいてなかっただろ?相変わらずスキだらけだよなー」
「らっ…乱馬には言われたくないわよっ!」

気が付くといつもの口げんかになってしまう二人。
けれど、あかねの顔はまだ赤い。
さっき、乱馬の腕の中で感じた優しい空気。
あれって…。

「ん?どーしたんだよ?おめー…顔、赤いぞ?」

顔に手を当ててうつむくあかねを心配そうに覗き込む乱馬。

ん?蜂に刺されたのか?こいつ。

「なっ…なんでもない!ほらっ!早く帰るわよっ」

…お日様のにおいだ。
ぽかぽかの、お日様のにおい。
乱馬の腕の中は、優しい、春の日差しのにおいがした。

乱馬の腕の中で感じた空気を思い出して、あかねは思わず一人で微笑む。

「お…おいっ!待てって!」

先にずんずん歩いていくあかねの後姿を追いかけながら、情けない声を出す乱馬。
そんな乱馬の声を聞きながら、あかねは一人うなずく。

お日様のにおいか…。
なんだか、とっても乱馬っぽいな。

そしてあかねはその場で足を止めて、後ろからついてくる乱馬に向かって思いっきり笑顔を返した。








コレは、TVアニメのエンディング曲の最期を飾った「虹と太陽の丘」を聴いて浮かんだ話ですv
この歌すっごく好きなんですよね〜♪
『太陽のにおいだね あなたの夢もシャツも』っていうトコが特に。
最初の『見つめあうほどそばにいて 優しさも笑顔もすれ違い』も『これぞ乱あ』って感じで好きですが。
んで…きっと、乱馬くんって、太陽っていうか、お日様のにおいしそうな感じがしたもんで。
よく体動かしてるから、汗臭いかな〜とも思ったんですが、でも、よくお風呂に入ってるしな…(笑)
書きたかったのは、あかねちゃんを守るため、何気に自分の腕の中にあかねちゃんを引っ張る乱馬くんですv
原作でもアニメでも、わりと乱あって危険な目に合うと密着度が高いですよねっ。
普段はあんなに意識し合っているのに、やっぱり危険度が高いとドキドキしている場合じゃないんかな?

と、いうことで。
あかねちゃんドキドキヴァージョンで書いてみました(笑)



(05/07/28 作成 ブログにて「虹と太陽の丘」というタイトルで発表済み分  05/09/13 加筆修正)





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